課題別ご提案例メンテナンス作業を、ベテランでも若手でも同じ対応ができるようにしたい

お役様のお悩み

同じ設備トラブルでも、若手だと原因を特定できず、結局ベテランが再訪問するケースが多いんです。対応内容や判断のポイントが人によって違うので、教育してもなかなか差が埋まらなくて…。最近はAIやナレッジツールの活用も検討していて、これを使えば改善できそうだとは思っているのですが、実際にどう使えばいいのか、現場で活用できるイメージが持てていません。ベテランの経験や勘を、若手でも再現できるようにしたいのですが、何から手をつけるべきか悩んでいます。

JIMの提案

同じ設備トラブルでも、ベテランは原因を特定できるのに、若手では判断できない。こうした差があると、「経験を積ませるしかない」「AIやナレッジツールを導入すれば解決できるのでは」と考えがちです。

ただ、まず着目したいのは、ベテランが「何を見て、何を疑い、どのように原因を切り分けているのか」です。ベテランの経験や勘に見えるものも、実際には過去の経験や設備の状態、症状など、さまざまな情報をもとに判断していることがあります。その判断の過程が本人の中にしかなければ、若手が同じように考えることは難しくなります。

そこで、最初からツールの導入を考えるのではなく、まずはベテランがどのような情報をもとに判断しているのかを整理し、その判断材料や考え方をほかの人も参照できる状態にしていくことが重要です。AIやナレッジツールについても、こうした情報をどう蓄積し、探し、活用できるようにするかという視点から考えると、現場での使い方が見えやすくなります。

ベテランの判断を、若手でも再現できるようにするには

メンテナンスの現場では、同じ設備で同じようなトラブルが起きても、担当者によって原因の特定や対応に差が出ることがあります。若手だけでは解決できず、ベテランがあらためて現場へ向かうケースも少なくありません。

こうした対応力の差は、単純な知識量や経験年数だけで生まれるとは限りません。ベテランは、設備の症状や過去の経験などから原因の候補を考え、確認すべきポイントを絞り込みながら対応しています。一方で、その判断の過程は作業報告書などに残りにくく、本人の経験や勘として蓄積されていることがあります。

AIやナレッジツールを活用する場合も、まず考えたいのは、こうしたベテランの判断をどのように共有し、ほかの担当者が活用できる状態にするかです。

ここからは、ベテランの判断を若手でも再現しやすくするために、ベテランの頭の中にある判断をどのように整理し、現場で使える情報として蓄積・活用していけばよいのか、順を追って考えていきます。

 

ベテランの対応は「思考の型」に分解する

ベテランの判断を若手でも再現しやすくするには、まず、トラブル対応のときに「どのように考えているのか」を分解してみます。

同じ「設備が停止した」という症状でも、考えられる原因は一つとは限りません。ベテランは、いつ停止したのか、エラーは出ているか、異音や温度変化はないか、直前にどのような作業をしていたかなどを確認し、原因の候補を考えます。そのうえで、確認結果をもとに候補を切り分け、最終的な対応を決めていきます。

若手へ共有したいのは、「この症状なら、この部品を交換する」といった対応結果だけではありません。「何を手がかりに原因を考え、何を確認して判断したのか」という思考の流れです。

過去の作業報告書に「電源ユニットを交換」とだけ残っていても、なぜ電源ユニットを疑ったのか、ほかの原因ではないとどう判断したのかまでは分かりません。再現したいのは作業そのものだけではなく、その作業を選ぶまでの判断です。

 

ベテランの判断プロセス

ベテランの判断は、次のような流れで捉えることができます。

  • 症状把握|何が起きているのかを具体的に確認する
  • ↓
  • 原因仮説|症状や設備の状態から、考えられる原因を挙げる
  • ↓
  • 切り分け|何を確認すれば原因を絞り込めるかを考え、確認する
  • ↓
  • 対応決定|確認した結果をもとに、必要な対応を判断する

このように判断の流れを分解すると、経験や勘として本人の中にあったもののうち、ほかの人と共有できる部分が見えやすくなります。

 

実際のトラブル1件で、ベテランの判断をたどってみる

最初からベテランのノウハウをすべて整理しようとせず、まずは実際にベテランが対応したトラブルを1件選び、そのときにどのように考えたのかを振り返ってみましょう。

たとえば、「設備が起動後5分ほどで停止する」というトラブルで、最終的に電源ユニットを交換したケースなら、次のようにベテランの判断をたどります。

  • 症状把握|「設備が動かない」ではなく、「起動後5分ほどで停止する」
  • ↓
  • 原因仮説|「部品の故障」と決めつけず、電源ユニット、配線、制御系などの可能性を考える
  • ↓
  • 切り分け|エラーの内容や電圧、配線状態などを確認し、原因の候補を絞り込む
  • ↓
  • 対応決定|確認した結果から電源ユニットの劣化と判断し、交換する

ここで大切なのは、最初からきれいな記録を作ることではありません。まずは実際の対応を振り返りながら、「なぜそう考えたのか」「その前に何を確認したのか」を一つずつたどり、普段は表に出てこない判断を明らかにしていきます。

ただし、ベテランの経験や勘は、本人にとって長年培ってきた専門性そのものでもあります。単に「ノウハウを教えてほしい」と求めるだけでは、十分に引き出せないこともあります。

そのため、知識を一方的に聞き出そうとするのではなく、実際の事例を一緒に振り返りながら、「このとき、なぜ最初にここを確認したのですか」「この結果から、なぜこの原因を疑ったのですか」と、判断の理由を具体的に確認していくことがポイントです。

実際の1件をこのようにたどることで、どのような判断がベテランの中だけにあるのか、若手に何が共有されていないのかが見えやすくなります。

 

記録を「探して使えるデータ」にする

ベテランの判断を言葉にできたら、次に考えたいのは、その情報をどのように残し、次のトラブル対応に活かすかです。

メンテナンスの現場では、対応した内容を作業報告書やメンテナンス記録などに残していることも多いでしょう。こうした既存の記録に、ベテランの判断や対応に関する情報を残していくことができれば、新たな仕組みを一から作らなくても、ノウハウを蓄積していく土台になります。

ただし、情報が記録されていても、それが文章として残されているだけでは、必要なときに見つけられないことがあります。

作業報告書は、本来「何が起きて、どのような作業をしたのか」を記録するためのものです。そのため、自由記述で「設備停止のため部品を確認。電源ユニットの劣化が見られたため交換し、動作確認後に復旧」と書かれていても、報告書としては内容が伝わります。

しかし、過去に似たトラブルがなかったかを探そうとすると事情が変わります。「設備停止」「電源ユニット」「劣化」など、書く人によって表現が異なれば、同じような事例があっても検索で見つけられないことがあります。

大切なのは、記録を残すことだけではなく、あとから必要な事例を探し、次の対応に使えるようにしておくことです。

 

「読めば分かる」から「探して使える」記録へ

そのためには、すべてを自由記述だけで残すのではなく、後から探すときの手がかりになる情報を揃えておくことが有効です。
たとえば、同じトラブルの記録でも、次のような違いがあります。

観点 よくある記録 探して使いやすい記録
症状   動かない エラーコードE12/起動後5分で停止
原因 部品不良 電源ユニット劣化
対応 交換 電源ユニット交換+配線確認

右側のように具体的な情報が残っていれば、「起動後に停止する事例」「同じエラーコードが出た事例」「電源ユニットが原因だった事例」といった切り口で、過去の対応を探しやすくなります。

ここで重要なのは、報告書を細かい項目だらけにすることではありません。あとから何を手がかりに過去事例を探したいのかを考え、そのために必要な情報を揃えることです。

 

いまの報告書で「似た事例」を探してみる

まずは、現在使っている作業報告書を変更する前に、実際のトラブルを一つ選び、過去の報告書から似た事例を探してみましょう。
たとえば、「起動後しばらくすると設備が停止する」というトラブルなら、

  • 同じ設備で起きた事例
  • 同じような症状が記載された事例
  • 同じエラーコードが記録された事例

などを探してみます。

このとき、「同じ症状なのに書き方が違って検索できない」「原因が『部品不良』としか書かれていない」「対応内容は分かるが、どのように原因を判断したのか分からない」といったことが見えてくれば、次に使うために何を揃えて記録すべきかが分かってきます。

そのうえで、まずは「症状」「原因」「対応」など、過去事例を探すために必要な項目から揃えてみましょう。最初から全社共通のフォーマットを作る必要はありません。特定の設備やチームなど対象を絞って試し、実際に過去事例を探しやすくなるかを確認しながら調整していく方法もあります。

 

ツールの導入前に「共有できる情報」をつくる

ベテランの判断を言葉にし、過去の対応を探して使える形で蓄積していくと、AIやナレッジツールを現場でどう活用するかも考えやすくなります。

たとえば、若手が設備トラブルに直面したとき、「同じ設備で、過去に似た症状はなかったか」「そのときは何を原因として疑い、どのように切り分けたのか」といった情報を探せれば、ベテランに聞く前に原因を考えるための手がかりを得られます。

AIやナレッジツールは、こうした情報を探したり、関連する事例を見つけたりする手段になり得ます。一方で、もとになる情報に必要な内容が残っていなかったり、同じ内容でも表現がばらばらだったりすれば、期待した情報を見つけにくくなります。

つまり、「どのツールを導入するか」を考える前に、「現場で何を知りたいのか」「そのために必要な情報が残っているか」を確認することが重要です。

 

ツールを入れても、もとになる情報がなければ活用できない

たとえば、過去の作業報告書が大量に蓄積されていても、そこに「設備停止」「部品交換」としか書かれていなければ、若手が知りたい「今回と似た症状では、何を確認すればよいのか」までたどれない可能性があります。

情報が整理されていない → 必要な事例を探せない・比較できない → 判断の参考にできない

AIを使う場合も同じです。AIが過去の情報を参照できる仕組みを用意したとしても、参照先に必要な情報がなければ、ベテランが持っている判断をそのまま補ってくれるわけではありません。

まず必要なのは、ツールそのものではなく、現場で活用したい情報が共有できる状態になっていることです。

 

まずは「同じ設備・似た症状」で過去事例を並べてみる

ツールの導入を検討する前に、これまで整理してきた情報を使って、同じ設備や似た症状の過去事例をいくつか並べてみましょう。

同じような症状でも、原因が異なることがあります。また、原因を特定するまでに確認したポイントや、最終的な対応が異なることもあります。

たとえば、次のような視点で事例を比較します。

  • 同じ症状でも、どのような原因の違いがあったか
  • 原因を切り分けるために、何を確認していたか
  • どのような確認結果から、原因を判断したか
  • 原因に応じて、どのような対応を選んだか

複数の事例を比較することで、「この症状ならこの対応」という単純な答えではなく、どの情報を確認すれば、原因を絞り込むための手がかりになるのかが見えてきます。

こうして「似た事例を探したい」「症状から確認すべきポイントを見つけたい」「過去にどのような切り分けをしたのか確認したい」といった現場での使い方が具体化すれば、AIやナレッジツールに何をさせたいのかも整理しやすくなります。

ツールの導入から考えるのではなく、現場でどのように情報を使いたいのかを先に考えることが、活用につなげるための出発点になります。

 

ベテランの経験を、現場で活用できる情報へ

ベテランと若手の対応力の差を縮めるために、最初からAIやナレッジツールの導入を考える必要はありません。

まずは、ベテランがトラブルに対応するときに「何を見て、何を疑い、どのように原因を切り分け、なぜその対応を選んだのか」を明らかにすること。次に、その判断や対応に関する情報を、必要なときに探して使える形で蓄積していきます。

こうした土台ができれば、「似たトラブルの過去事例を探す」「原因を切り分けるための確認ポイントを調べる」といった情報の使い方が具体的になり、AIやナレッジツールに何をさせたいのかも見えやすくなります。

一方、実際に進めるには、ベテランの判断の整理だけでなく、既存の作業報告書やメンテナンス記録の整備、必要な情報を探せる仕組みづくりなども必要になります。

ジェイ・アイ・エムでは、既存の文書やデータの整理・整備から、必要な情報を横断して検索・活用するための仕組みづくりまで、お客様の情報環境や活用目的に合わせて支援します。

ベテランの経験や勘を、本人だけが使えるノウハウのままにせず、必要な人が必要なときに活用できる情報へ変えていく。

そのために、まずは自社にどのような情報があり、どこまで活用できる状態になっているのかを整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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