データ自体は部門ごとに収集・蓄積できているのですが、それをどのように組み合わせて活用すればよいのかが分かりません。
経営層からは「データを使って新しい示唆を出すように」と求められていますが、仮説を描くことが難しく、具体的な活用のイメージを持てずに立ち止まってしまっています。結果として、せっかくのデータが報告資料の作成に使われる程度で、意思決定や業務改善につながる形で活かせていません。
データは揃っているにもかかわらず、「どの切り口で見ればよいのか」「どの部門のデータを組み合わせれば意味があるのか」が分からず、活用に至らないケースは少なくありません。特に製造業では、生産、営業、在庫、原価といったデータが存在しても、活用のストーリーを描けないまま報告資料づくりに終始してしまうことがあります。
一般的な対応としては、仮説を立て、その検証に必要なデータを組み合わせて分析する方法があります。例えば、需要の波動が製造ラインに与える影響を想定し、営業データと生産計画データを突き合わせる、といった取り組みです。しかし、「仮説を先に立ててデータを組み合わせる」ことは王道ですが、仮説の立案には経験や専門知識が必要で、誰もがすぐに取り組めるわけではありません。
まずは身近にあるデータを組み合わせてみてはいかがでしょうか。例えば、営業データと在庫データを並べれば「受注に対して在庫が過剰か不足か」が見えますし、原価と調達データを組み合わせれば「利益を圧迫している要因」が浮かび上がります。このように身近なデータを組み合わせることで、仮説は立てられずとも、データを有効的に活用できます。
私たちは、こうした「データの組み合わせによる新しい視点」を、既存のシステムやファイルをそのまま活かしながら実現できる環境をご提案しています。仮想統合によって複数のデータを柔軟に組み合わせ、BIツール上で試行錯誤しながら考えられる仕組みを整えることで、仮説がなくても手を動かしながら気づきを得ることが可能になります。
まずは、どの部門のデータを組み合わせたいのか、またどのような成果を期待されているのかをお伺いし、最適な進め方をご提案いたします。詳細なご要望をぜひお聞かせください。
データの活用イメージが描けないときのヒント
多くの製造業で、営業、生産、在庫、原価といったデータはすでに蓄積されています。それにもかかわらず、「どの切り口で見ればいいのか」「どのデータを組み合わせれば意味があるのか」が分からず、活用のイメージを描けないケースは少なくありません。結果として、せっかくのデータが報告資料づくりにとどまり、意思決定や改善行動につながらない――そんな状況に陥りがちです。
断片的な分析から抜け出すための視点
部門単位での分析は、それぞれの業務を深く理解するうえで欠かせません。しかし、営業・生産・購買などがそれぞれ独立してデータを見ていると、「なぜこうなったのか」「他の要素と関係があるのか」といった本質的な問いにはたどり着けません。結果として、部分的な最適化はできても、全体の改善にはつながらない――。
多くの製造業がこの“壁”に直面しています。
たとえば、生産部門は「歩留まりを上げる」ことに注力していても、営業部門が需要変動を予測しきれず生産量が過剰になっている場合、在庫コストが増大し、結果的に原価率が上がることがあります。あるいは購買部門が「仕入れ価格を抑える」努力をしても、調達先変更によって品質トラブルが発生し、クレーム対応や再検査で手戻りが増えてしまうケースもあります。
こうした“つながり”を発見するには、部門をまたいでデータを眺め、相互の関係性を可視化することが不可欠です。
ありがちな行き詰まり例
- 各部門で分析しても、断片的な結果しか出てこない
- 仮説を立てようにも、何を前提にすればよいか分からない
- 「次にどんなデータを見ればよいか」が決められず止まってしまう
こうしたときに有効なのが、“仮説を立てる前に、まずはデータを組み合わせて眺める”という発想です。たとえば、営業データと生産計画を並べてみるだけでも、「予測と実績のズレがどの月に大きいか」が見えてきます。在庫推移を重ねれば、需要変動と生産過多の因果が浮かび上がります。
このように、データを組み合わせて可視化することで、“仮説の種”が自然に見つかることもあります。仮説を先に立てるのではなく、まず“見ながら考える”スタイルに切り替えることで、データ分析は「正解探し」から「気づきを生み出す試行」へと変わります。
次のセクションでは、この“見ながら考える”ための具体的な工夫として、データの組み合わせ方・見方・並べ方を3つのステップで紹介します。
1. データの組み合わせ方を工夫する
部門ごとに集められたデータは、それ単体では“点”の情報にすぎません。しかし、複数のデータを組み合わせることで“線”が見え、原因と結果のつながりを捉えられるようになります。
まずは、身近な2種類のデータを突き合わせることから始めましょう。
組み合わせるだけで見える「現場の真実」
たとえば、営業×在庫を突き合わせるだけで、「売れていないのに在庫が積み上がっている」「在庫切れで販売機会を逃している」といった現場の“ひずみ”が見えてきます。
また、原価×調達のような組み合わせでは、「一見すると仕入れ単価は下がっているのに、材料ロスの増加で総原価が上がっていた」といった矛盾を発見できることもあります。
| 組み合わせ例 | 見えてくること |
|---|---|
| 営業 × 在庫 | 受注に対して在庫が過不足していないか |
| 生産計画 × 需要予測 | 生産体制が需要変動に対応できているか |
| 原価 × 調達 | コスト増加の要因がどこにあるか |
| 品質 × クレーム | 不良率と顧客クレームの関連性 |
このように、異なる部門のデータをつなぐだけで、“業務のつながり”そのものが可視化されるのです。
ポイントは「完璧なデータ」を求めないこと
「分析するには、まずデータを整えなければ」と考えすぎると、スタートラインが遠のいてしまいます。
重要なのは、手元にあるデータをどう組み合わせるかです。
たとえば:
- 在庫データが数量単位、営業データが金額単位でも構いません
- 生産計画が週単位、売上が月単位でもまずは並べてみましょう
単位が揃っていなくても、「この期間に在庫が積み上がっている」「この月は売上が落ちている」といった傾向の一致・ズレを掴むことができます。
“仮説を持たない組み合わせ”から始める
データを組み合わせる目的は、最初から答えを出すことではありません。
むしろ、「並べてみたら何か見えてきた」という状態こそがスタートラインです。
たとえば:
- 営業×在庫 → 売れていないのに在庫過多
- 生産×品質 → 稼働率が高いときほど不良率も上昇
- 原価×稼働率 → 稼働が落ちた時期に固定費が効いて原価上昇
これらは、組み合わせて初めて気づける“事実の断片”です。
そこから仮説を立て、「なぜそうなったのか」を掘り下げていく――。この“発見から考える”プロセスこそが、データ活用の第一歩です。
👉 まずは2種類のデータを突き合わせるだけでも、業務改善のヒントは見つかります。
「完璧なデータを用意して分析する」のではなく「今あるデータを組み合わせて考える」ことから始めてみましょう。
2. データの見方を変えてみる
データを組み合わせても、すぐに明確な差や傾向が見えないことがあります。そんなときは、“データの見方”を少し変えるだけで、新しい発見が生まれます。同じデータでも、時間軸・部門軸・単位軸の切り口を変えることで、今まで見えなかった“つながり”が浮かび上がります。
時系列で比べて見る
データを時間軸で並べるだけで、「どの時期に、何が起きたか」が見えてきます。変化のタイミングを把握することで、改善のきっかけを掴みやすくなります。
| 組み合わせ例 | 見えてくること |
|---|---|
| 売上推移 × 歩留まり推移 | 不良率が高い月は売上が落ちている |
| 稼働率 × 原価率 | 稼働が下がると固定費が効いて原価率が上がる |
| 受注件数 × 納期遅延件数 | 受注急増の翌月に遅延が増えている |
| 不良発生件数 × 教育実施日 | 作業者教育後に不良件数が減少している |
| 出荷数 × クレーム件数 | 出荷増加とともに品質対応の負荷が上昇している |
👉 時間を軸に並べることで、“点の情報”が“線のストーリー”として見えてきます。
部門をまたいで見る
営業・生産・購買・品質など、部門ごとに独立しているデータを横断して比較することで、「どの業務がどこに影響しているのか」がわかります。
| 組み合わせ例 | 見えてくること |
|---|---|
| 営業予測 × 生産実績 | 需要予測がずれた月ほど在庫過多になっている |
| 生産計画 × 購買リードタイム | 購買遅延が生産遅れを引き起こしている |
| 品質データ × クレーム件数 | 不良率が上がった翌月にクレームが増加している |
| 設備稼働率 × 修繕履歴 | 稼働率低下が特定設備の不具合と連動している |
| 出荷データ × 顧客満足度調査 | 納期遵守率が高い顧客ほど満足度も高い |
👉 部門横断で見ると、単体では気づけない「因果のつながり」が見えてきます。
単位をそろえて見る
データ同士を比較する際、単位や粒度がバラバラだと関係性が見えにくくなります。
そこで、同じ単位・基準に揃えて見ることで、判断しやすくなります。
| 組み合わせ例 | 見えてくること |
|---|---|
| 生産数量(台数) × 販売数量(台数) | 出荷数と販売数のズレ=在庫滞留の可能性 |
| 品目別原価(円/個) × 販売価格(円/個) | 原価率が高い製品を特定できる |
| 部門別工数(時間) × 製品別利益(円) | 作業時間が長い製品ほど利益が圧迫されている |
| ライン別歩留まり(%) × 不良発生率(%) | 品質のばらつきを定量的に比較できる |
| 顧客別売上構成比(%) × 粗利構成比(%) | 売上は大きくても利益貢献が低い顧客が判明 |
👉 単位を揃えるだけで、データが「並べて比べられる情報」に変わります。
「視点を変える」とは、“問いを変える”こと
同じデータを見ても、どんな問いを立てるかで結果の意味が変わります。
| もとの問い | 視点を変えた問い | 新たに見えること |
|---|---|---|
| どの製品が一番売れているか? | 売れている製品は、どんな条件のときに売上が伸びているか? | 季節・地域・営業担当などの要因が浮かぶ |
| 不良が多いのはどのラインか? | 不良が発生するのはどんな条件のときか? | 原材料ロットや稼働率との関連を特定できる |
| 納期遅れが多いのはどの製品か? | 遅れはどの工程・部門で発生しているか? | ボトルネック工程を特定できる |
| 売上が下がっているのはどの顧客か? | 売上が下がった顧客の共通点は何か? | 価格改定や品質要因などの背景を把握できる |
👉 視点を変える=問いを変えること。
この習慣が根づくと、現場の中から“データを使った改善テーマ”が自然と生まれます。
次のセクション「3. 仮説を立てずに並べてみる」では、「とりあえず可視化してみる」ことで気づきを得る、現場主導の“手を動かす分析”の考え方をご紹介します。
3. 仮説を立てずに並べてみる
データ活用というと、「仮説を立てて検証するもの」というイメージが強いかもしれません。しかし、実際の現場では“仮説が立たないからこそ止まってしまう”ケースが多いのではないでしょうか。そんなときは、目的を決めずに、まずデータを並べてみる。このシンプルな行動が、最初の一歩になります。
“違和感”を出発点にする
「最近、原価が上がっている気がする」「不良が増えているような気がする」──こうした現場の違和感は、データを動かすための最高のきっかけです。気になる項目を2〜3組み合わせてみるだけで、思いがけない関係が浮かび上がります。
たとえば:
- 原価と稼働率を並べたら、「稼働が落ちた時期に原価が上がっていた」
- 営業データと在庫データを並べたら、「売れていないのに在庫が積み上がっていた」
- クレーム件数と生産ラインを照らしたら、「特定ラインだけ不良が集中していた」
“考えてから見る”のではなく、“見ながら考える”──この順番の方が、気づきは早く生まれます。
グラフで「傾向のつながり」を掴む
数字を横並びにしてもピンと来ないときは、グラフで“重ねて見る”のがおすすめです。折れ線でも棒でも構いません。2本の線が交差する瞬間や、動きがズレるタイミングに注目します。
たとえば:
- 営業実績と在庫数の折れ線を重ねると、需要と供給のギャップが一目で分かる
- 稼働率と歩留まりを重ねると、「稼働を上げすぎた時に不良率が跳ねる」傾向が見える
- 原価と売上を重ねると、利益率を圧迫している構造が見えてくる
グラフの形が語る“違和感”こそが、次の仮説の種になります。見方を変えるのではなく、見える化の方法を変えるのです。
試行錯誤のサイクルを短くする
仮説を立ててからデータを準備し、分析結果を確認する──従来の手順はどうしても時間がかかり、途中で動きが止まりがちです。そこで大切なのが、「並べて見る → 気づく → 試す」を短いサイクルで回すこと。
たとえば:
- データを横に並べてみる
- 何かズレや変化を感じたら、次に重ねる項目を変えてみる
- その結果から「なぜだろう?」を考える
この繰り返しで、分析が“考察”から“習慣”に変わります。最近では、仮想統合ツールやBIツールを使えば、システム構築を待たずにこの試行を行うことも可能です。手を動かしながら考える──これが、止まらないデータ活用の実践的な形です。
行動のきっかけをつくる
データ分析の目的は、「完璧なモデルを作ること」ではなく、次の行動を決めるための気づきを得ることです。ほんの小さな発見でも構いません。「不良の多い時間帯を特定できた」「歩留まりが改善した要因が見えた」──そうした小さな気づきが、現場を変える原動力になります。
👉 仮説がないから止まるのではなく、仮説がなくても動ける環境を整える。
それが、データ活用を“継続できるもの”に変える鍵です。
データは“動かしながら考える”時代へ
これまで見てきたように、データ活用は「仮説を立ててから始めるもの」ではなく、仮説を立てながら進めていくプロセスへと変わっています。
- 部門ごとに断片的だった情報を組み合わせてみる
- 同じデータでも見方を変えてみる
- 完璧を目指さず、まずは並べてみる
この3つのステップを繰り返すだけで、これまで見えなかった“つながり”や“改善のヒント”が浮かび上がります。現場の違和感や勘をきっかけに、「見ながら考える」「考えながら動く」サイクルを回していく──それが、DXを“身近なもの”に変える第一歩です。
当社のサポート
私たちは、既存のシステムやファイルをそのまま活かしながら、営業・生産・在庫・品質など複数のデータを仮想的に統合し、可視化・分析できる環境をご提供しています。仮説がなくても始められる“試せるデータ活用環境”を整えることで、現場の発想を止めずに改善へつなげることができます。
「まずはどんなデータを組み合わせればいいのか?」「どこから始めれば成果につながるのか?」
──そんな段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。
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